朝鮮日報 記事入力 : 2014/05/28 10:43
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安全後進国:安さを追求し、安全を度外視する韓国社会
【特集】安全後進国
安全はタダではない。
コストが掛かるものだ。
しかし、韓国社会は「安くて安全なもの」もあるという錯覚がまん延している。
甚だしくは政府から「もっと安く」と要求され、安全を犠牲にする社会をつくり出している。
安全に対する投資をないがしろにした結果、事故が起きれば、何倍ものコストと犠牲が生じるにもかかわらず、政府からして「安全経営」のマインドは皆無だ。
セウォル号の惨事は、船会社が船体の購入から運航に至るまで安全には全く投資を行わず、低コストばかり追及した結果起きた代表的な安全事故だ。
セウォル号を運航していた清海鎮海運は、収益が上がる貨物をできるだけ多く積むことに躍起となり、運賃収入が相対的に少ない乗客の安全を疎かにした。
■乗客より貨物重視
事故当時、セウォル号は3608トン(車両を含む)を載せており、運賃として7000万ウォン(約694万円)以上を受け取っていたとみられる。
一方、乗客446人が支払った運賃は総額で3000万ウォン(約298万円)台だ。
貨物のほうがもうかる結果、乗客より貨物が重視される「主客転倒」が起きていたことになる。
セウォル号では過積載が日常化しており、いかに多くの荷物を積み込むかが重要だった。
事故当時の積載貨物は積載限度(978トン)の3.7倍に達していた。
事実上「貨物船」に等しく、乗客は「高価な積み荷」の上についでに乗せられたに等しい状態だった。
セウォル号では、3等船室の乗客の運賃が7万1000ウォン(約7040円)だったのに対し、4.5トントラックの輸送料金(貨物積載状態)は59万3100ウォン(約5万8800円)だった。
トラック1台で乗客8人分以上の収入を挙げられる計算だ。
セウォル号は車両も限度の148台を32台上回る180台積んでいた。
さらに貨物を多く積み込むため、船のバランスを取るためのバラスト水を抜いていた。
船長のイ・ジュンソク容疑者(69)も清海鎮海運に月給270万ウォン(約26万7800円)で雇われた契約職だった。
沿岸旅客船の船員の平均月給(306万ウォン)を下回る額だ。
海洋水産部(省に相当)の関係者は
「ひどい待遇なので、船長としての責任感を感じろといっても無理があったのではないか」
と語った。
2012年にセウォル号を導入した際にも、掛けたコストは最低限だった。
日本で建造されてから18年が経過した船で、契約書上の価格は116億ウォン(約11億5000万円)だった。
同じサイズの貨物船を新たに建造する場合、600億-1000億ウォン(約60億-99億円)の費用が掛かるため、老朽船を導入した格好だ。
■安全管理と競争力強化は後回し
このように韓国の沿岸旅客船業界が低コスト構造で動いているのは、零細船会社が多い上、市場環境も劣悪だからだ。
海洋水産部は全国99路線のうち85路線を独占航路とした上で、運賃を物価上昇率を上回る率で引き上げることを制限してきた。
業界の構造調整を図り、競争力を向上させるどころか、一方では独占経営を認め、また一方では価格規制を行うなど、市場構造がゆがむのをむしろ助長してきた側面がある。
事故を受け、海洋水産部は
▲零細船会社を地域別に大規模化する
▲独占・寡占の航路を競争体制に変更し競争を促進する
▲平日と週末の料金に差を付ける
といった弾力的運賃制度の導入―など旅客船業界の構造調整案の検討を遅ればせながら開始した。
■最低価格落札制度、事故の遠因に
仁川国際空港第2旅客ターミナルの建設工事が最近、2回にわたり不調に終わった。
建設会社が
「空港公社の予定価格があまりに低く、受注しても1000億ウォン(約99億円)以上の赤字が出かねない」
と応札を見送ったためだ。
大韓建設協会のチェ・サングン契約制度室長は
「利益が上がらない最低価格落札制度を無理に推進すれば、業者がコストを削減するため、無理な工事を行う可能性があり、事故につながりかねない」
と指摘する。
最低価格入札制度で建設されたソウル市の聖水大橋が1994年に崩壊事故を起こすと、政府は最低価格入札制度を廃止し、価格と技術力を同時に評価する「適格審査落札制度」を導入した。
しかし、2001年に予算削減を理由に最低価格入札制度が再導入された。
一方、先進各国では1990年代半ば以降、価格や品質などを総合評価する最高価値落札制度への転換が進んだ。
低価格受注競争と手抜き工事につながる最低価格入札制度で安全を度外視すれば、結局は高リスク、高コストを招くと判断したためだ。
変圧器を生産するある電気機械メーカーの代表は、韓国電力公社(韓電)が実施する変圧器の入札に参加するたびに頭を抱えている。
落札するためには、変圧器の価格を相当低く抑えなければならないためだ。
韓電は価格だけでなく、性能などを考慮した「総合落札制度」を実施しているというが、結果的には低価格で応札した業者が落札している。
そのため、一部企業は落札を確保するためにあの手この手を使っている。
例えば、入札時には最高級の国内産部品を提出し、落札後には低品質のロシア製部品を使用するといった具合だ。
同代表は「ロシア製変圧器は安全上の事故が起きる可能性が国産品よりも高いことは承知しているが、収支を合わせるためにはどうしようもない。
とにかく最も安いものを追求するという公共部門の慣行を改めないまま、零細企業にだけ事故の責任を転嫁するのは無責任だ」と不満を漏らした。
』