2014年3月3日月曜日

PM2.5:中国を相手取った国際訴訟は可能か::中韓親密関係にヒビが

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朝鮮日報 記事入力 : 2014/03/03 11:11
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/03/03/2014030301321.html

PM2.5:中国を相手取った国際訴訟は可能か
韓中両国間では被害を訴える根拠となる法律や条約なし
中国で発生したPM2.5による被害なのか立証は困難
外交問題に発展した場合、両国による共同研究にも支障

 京畿道竜仁市に住むキム・オクヨンさん(61)は最近、毎朝遠くの山を眺める習慣が身に付いた。
 「山が見えないほど空気が汚れているときは、スーパーにも行かない」と話した。

 中国発の微小粒子状物質(PM2.5)によって韓国中がストレス状態に陥り、人々はこの問題に対し複雑な心情をあらわにしている。
 ソウルなど首都圏では2日、久々に透き通った空を拝めたが、先月22日から今月1日までのソウルのPM2.5の濃度は8日連続で「やや悪い水準(1立方メートル当たり81-120マイクログラム〈100万分の1グラム〉)」を上回った。
 ソウル市によると、2011年にソウル地域に飛来したPM2.5の約半分(49%)は中国で発生したものだという。
 そのため、韓国で発生するPM2.5による被害について、中国を相手取って国際訴訟を起こすべきではないか、という声も出ている。
 実際、米国とカナダの間で争われた「トレイル溶鉱所事件」など、国家間で大気汚染をめぐる訴訟が起こされたケースもある。

■「PM2.5をめぐる訴訟は困難」

 だが、韓国が「中国発のPM2.5によって被害を受けた」として、中国を相手取り補償を求めるのは困難だ、と専門家たちは話している。
 被害を受けたとの理由で、国家間で訴訟を起こすには、両国が共に認める根拠となる法律や条約がなければならないが、韓国と中国の間にはそのような根拠がないためだ。

 環境部(省に相当)の
 関係者は
 「国際法上、双方が同意しなければ、他国に対しいかなる義務を負わせることもできない。
 韓国は中国との間で、環境分野に関する了解覚書(MOU)や低レベルの協定を締結したことはあるが、法的拘束力のある条約を締結したことはない」
と指摘した。

 もし、韓中両国が条約を締結し、訴訟が可能になったとしても、中国のために被害を受けたとして、これを立証することは容易ではない、というのが専門家たちの見解だ。
 弁護士法人「太平洋」のキム・ガプユ弁護士(国際仲裁専門)は
 「PM2.5のために被害を受けた韓国人が、中国で発生したPM2.5によって被害を受けたのか、あるいは韓国で発生したPM2.5によって被害を受けたのかを証明するのは難しく、訴訟を起こしたとしても、事実上『象徴的な次元』にとどまる可能性が高い」
と指摘した。

 その上、韓中両国がPM2.5の削減をめぐって協力していくためには、友好的なムードの中で共同研究や資料の共有などを行う必要があるが、訴訟を起こした場合、外交摩擦によって「やぶをつついて蛇を出す」結果を招くだけだ、と懸念する声も出ている。
 弁護士法人「ファウ」のパク・スンファン弁護士(韓国環境公団元理事長)は
 「中国とは外交関係もあるため、訴訟を起こすとしても、緻密(ちみつ)かつ時間をかけて準備する必要がある」
と指摘した。


■米国とカナダがばい煙をめぐって争ったケースも

 環境をめぐる争いは「他国によって被害を受けた」と立証するのが困難で、訴訟を起こすための手続きも複雑だが、これまでに被害に対する補償まで実現したケースがないわけではない。
 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の、米国との国境に近いトレイル地域にある溶鉱所が、19世紀末から鉛と亜鉛を精錬する過程で亜硫酸ガスを発生させ、米国側で果樹園などが大きな被害を受けたとして、訴訟が起こされた。

 国際合同委員会に付託され、2回にわたって仲裁裁判が行われた結果、1931年までに被害額35万ドル(国際合同委員会)、32年から37年にかけ同7万8000ドル(38年の仲裁裁判中間判決)を支払うよう命じる決定がなされ、さらに毎年の被害の調査費用として、7500ドルまでの請求が可能という決定(41年の仲裁裁判最終判決)も下った。

 一方、オーストラリアとニュージーランドは1973年、フランスが南太平洋で核実験を行ったことにより、自国民に対する被害が懸念されるとして、国際司法裁判所に「フランスの南太平洋での核実験を禁止するよう命じてほしい」との訴訟を起こした。
 敗訴することを懸念したフランスが、裁判の結果が出る前に、自発的に「今後核実験を行わない」と宣言したため、結局判決が下されることはなかった。

 環境部の関係者は
 「韓中両国はすでに実務レベルで、リアルタイムの大気汚染の観測値や、大気汚染物質の排出量などのデータを共有することで合意している。
 訴訟よりは、中国側の専門家などと共に、PM2.5の量を減らすよう実質的な取り組みをしていくことが急務だ」
と指摘した。